診療放射線技師の業務効率化とは?
業務効率化が求められる背景
タスク・シフトによる業務範囲の拡大
「医師の働き方改革」への取り組みとして、これまで医師のみが対応していた業務を他の職種に移管する「タスクシフト・シェア」が行われています。放射線科領域においては、造影剤の静脈路確保などの業務が診療放射線技師へ移行するという取り組みが行われています。このことにより技師部門における業務量が増加しているという状況があり、これまでと同じ業務フローのままでは現場が回らなくなるため、業務効率化が求められています。
部門マネジメントに不可欠な数値管理
業務量の増加に伴い、適切な人員配置・機器の更新を行うには、客観的なデータに基づいた管理が必要となります。検査件数のほか、装置の稼働率や検査毎の所要時間、医師の読影負担状況などについて、正確に数値化することが必要になります。しかし、日常の業務に追われる中でこのようなデータの収集・分析は非常に困難といえます。
アンケートで見る業務管理の実態と課題
容易な「件数把握」と困難な「質・コスト管理」
2022年度に実施された放射線部門の効率化に関するアンケートによると、多くの施設において「検査件数」「収支」については把握しているものの、「業務の質」「コスト対効果」に関する管理は不十分な状況となっている傾向があることがわかります。検査件数は把握できていたとしても、再撮影率など「質」に関連する指標や人件費や機器減価償却費など「コスト」に関連する指標は集計難易度が高いといえます。
古いシステムが阻むデータ抽出の壁
詳細なデータ分析を阻む原因のひとつとして、院内システムの仕様が上げられます。アンケートを見ても、電子カルテシステムが古いため「1つのデータを抽出するにも苦労する」「必要なデータをすぐに取り出せるシステムが欲しい」といった声も見られます。
現場のRPA認知度は約3割と発展途上
データ抽出に関する課題を解決するためのツールとして期待されているのがRPA(Robotic Process Automation)です。しかしアンケートによると、現場におけるRPA認知度はおよそ3割程度にとどまっています。事務作業を自動化できる有効な選択肢ではあるものの、現場においては理解が進んでいないことから活用が進んでいない現状があるといえます。
解決策① RPAによる事務作業の自動化
検査件数や待ち時間の集計を効率化
RPAの導入により、人間が操作するのと同じようにシステムにログインし、必要なデータの自動収集・集計を行えるようになります。例として、日々の検査件数や待ち時間の集計などを効率的に行えるようになります。また、夜中に自動で集計を行い、エクセルでレポートとして作成するといったことも可能になるため、業務の負担を大幅に軽減できる点に加え、データに基づく意思決定が行えるようになるといったメリットもあります。
夜間救急や未読管理などの定型業務への応用
24時間365日稼働可能である、という点もRPAの強みです。そのため、人間が嫌がる時間帯の業務を行うのにも向いています。例として、夜間救急におけるCTやMRI検査の情報管理や、入院CT・MRI画像診断報告書が未読になっているものについて報告を行い、確認漏れを防止するといった活用方法が考えられます。
ヒューマンエラー防止と省力化のメリット
人間が作業を行った場合には、いくら気をつけていたとしても入力ミスや見落としといったヒューマンエラーを完全に無くすのは難しいという面があります。対してRPAはルール通りに処理を行っていくため、ミスのない作業が可能になります。さらに単純作業をRPAに任せることによって人間のリソースを空けられ、より専門性の高い業務に注力できるようになりますので、部門全体の生産性向上も期待できます。
解決策② 遠隔画像診断による読影支援
遠隔画像診断サービスとは?仕組みと特徴
遠隔画像診断サービスの活用も解決策のひとつとして挙げられます。この遠隔画像診断サービスとは、院内で撮影を行ったCTやMRIの医療画像について、セキュアなネットワーク経由で外部の読影センターに送信し、そこで契約している放射線科専門医が診断レポートを作成して返却するという内容のサービスです。
こちらのサービスは、常勤医が不在・専門医が不足している医療機関においても活用されているサービスです。院内のワークフローを変更せずに、診断体制の強化が行える点がメリットといえます。
読影遅延の解消とレポート管理の適正化
画像診断件数の増加に加え、放射線科医が不足していることによる読影の遅延は深刻な問題です。しかし、遠隔読影サービスの活用により、常勤医が対応しきれない部分を外部委託できれば遅延の解消に繋げられます。
例えば、検診画像の読影など緊急性の低いものは外部へ依頼し、常勤医は緊急の症例や院内で行われるカンファレンスなどに注力する、といった活用を行うことによって、レポート返却までの時間の適正化も期待できます。
外部専門医の活用による診断品質の担保
ひとりの放射線科医がすべての領域を専門レベルで診断を行うのは困難です。しかし、遠隔読影サービスではそれぞれの領域の認定医・専門医が在籍しているため、外部の専門医を活用して診断品質を担保できるというメリットがあります。また、小規模施設でも大学病院と同等の診断品質を担保できることや、見落とし防止を目的としたダブルチェック機能としての活用もできます。
「内部自動化」×「外部活用」で部門を最適化
RPAと遠隔診断の使い分けと相乗効果
RPAによる内部事務の効率化と、遠隔診断サービスによる外部リソースの活用を組み合わせることで、より効率的な運用も可能になります。例えばRPAによって未読影のリストを自動で抽出し、そのリストに基づき遅延しているものを外部に依頼するといった連携などが考えられます。このように、上手な使い分けによって医師と技師双方の負担を抑えることに繋げられます。
技師長が本来注力すべきマネジメント業務
RPAや遠隔診断サービスを導入することで、技師長や管理者がルーチンワークから解放された場合、本来の役割であるマネジメントに注力できるようになります。具体的な業務としては、スタッフ教育や医療安全管理、機器更新計画の策定、医師との連携強化といったものが考えられます。データの作成を担当するのではなく、作成されたデータを活用し、部門の方向性を示すリーダーシップを発揮することが求められるといえます。
まとめ
放射線科における働き方改革では、例えばRPAの導入により事務作業の自動化を行う、遠隔診断サービスの導入により医師の負担を軽減するといった取り組みが必要になってきます。このように、技術と仕組みを適切に組み合わせることによって、働き方の改革が可能となるとともに、患者のメリットにもつながる持続可能な医療体制に繋げられます。
