腹部の画像診断での見落としポイント
ここでは、見落とし対策を徹底した遠隔画像診断サービスを提供するワイズ・リーディングの代表 中山氏を監修に迎え、腹部画像診断における見落としのポイントとその対策を解説します。

- 代表取締役兼CEO
- 放射線診断専門医 医学博士
- 熊本大学医学部 臨床教授
放射線診断専門医 医学博士および熊本大学医学部 臨床教授である中山氏。ワイズ・リーディングの代表として17年以上、遠隔画像診断に携わる。
医学部生や診療放射線技師、医療関係者などへ画像診断の実践的な症例学習や勉強会を行うなど、医療の質を向上することに真摯に向き合い続ける。
実例で解説
腹部で見落としをしやすいポイント
ワイズ・リーディングは、未来の医療を支えるため診療放射線技師や若手医師を対象に、日常診療で見落とされやすい症例や、誤診されやすい症例を解説する活動を行っています。
ここではその解説より、腹部で見落としやすい事例を紹介します。
一次読影で見逃された再発GIST
臨床情報の概要
- 80代男性
- 小腸GISTの術後
- 再発有無の確認のため、造影CTを施行
一次読影で見落としのあったポイント
見落とされたのは、下行結腸腹側に見られた腫瘤性病変です。
病変は辺縁に造影効果を示し、内部には嚢胞様構造を伴っており、嚢胞部分と充実部分が混在しています。これはGISTの再発に典型的な所見です。
冠状断像では、病変が腸管に接しているものの、腸管内腔には突出せず、一見すると腸管構造と誤認されがちでした。しかし実際には、腸管と連続して存在する再発所見だったのです。
見落としを起こさないための対策
GISTのように、嚢胞性・充実性が混在する腫瘍では、腸管と病変との識別が非常に重要になります。腸管と見間違えないためには、腸管の連続性の確認が不可欠です。
横断像で腸管の走行を丁寧に追っていけば、腫瘤が腸管腔とつながっていないことに気づけます。一見自然に見える構造でも、違和感のある連続性に気付けるような注意深い読影が求められます。
大動脈瘤術後経過観察中に偶然発見された膀胱癌疑い
臨床情報の概要
- 50代男性
- 既往歴:破裂性大動脈瘤に対してTEVAR(胸部ステントグラフト内挿術)を施行
- 検査目的:術後の経過観察目的(胸部~骨盤CT)
読影結果
胸部下行大動脈にはTEVAR施行後の変化が見られ、左肺尖部にはbulla(気腫性嚢胞)を認めます。肝内には低吸収域があり、肝嚢胞または肝血管腫が疑われるため超音波検査での確認が推奨されます。
今回の検査目的である大動脈から離れた「骨盤内」において、膀胱内腔に隆起性に突出する病変が認められます。 膀胱前壁右側を含め、合計3か所に結節影があり、膀胱がん(尿路上皮癌)を強く疑う所見です。
診断と考察
- 関心領域外(骨盤内)での偶発的所見
- 多発し、内腔へ乳頭状・隆起性に発育する典型的特徴
膀胱がんは多発しやすい特徴があり、本症例でも複数の結節が確認されました。 CTは胸部から骨盤まで撮影されていましたが、主目的が「大動脈(TEVAR後)」の評価であったため、意識が胸部~腹部大動脈に集中し、骨盤臓器である膀胱のチェックが疎かになりがちな事例です。確定診断のために超音波やMRI、膀胱鏡などの追加検査が必要です。
遠隔画像診断サービスの選択を
ワイズ・リーディングでは、このような見逃しが発生しやすい事例に対しても厳格なチェック体制を整えることで、徹底的に見逃しを防止するように努めています。病院・クリニックの未来を守るためにも、約130名の放射線診断専門医が的確な診断をする「Y’s REPORT」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
仕組みを構築した
遠隔画像診断サービス

ワイズ・リーディングでは、約130名の放射線診断専門医が在籍※し、最大4重チェックでの読影を行っていることが特徴。一次読影後にダブルチェックを行い、必要に応じて25年以上の経験を持つベテランの放射線診断専門医が二次読影を行います。
さらにスライス枚数加算や部位加算を一切行わないことで、予算を心配せずに依頼できる仕組みを確立。医療施設がコスト削減のため、画像を減らすことがなくなり、より精度の高い診断を提供しています。
腹部の画像診断で見落としが起こる原因
解剖学的な複雑さと構造の重なり
腹部は、消化管・肝胆膵・血管・リンパ系など多くの臓器が密集しています。
特に腸管周囲では、腫瘍・炎症・嚢胞・リンパ節などが重なり合って見えるため、小さな病変や構造の異常が背景に埋もれてしまうことがあります。
病変の形状や性質による見えにくさ
たとえば、GIST(消化管間質腫瘍)のように、腸管壁と一体化するような腫瘤は、腸管構造と誤認されやすくなります。
また、嚢胞と充実成分が混在するタイプでは、明瞭な腫瘍性病変として認識されにくく、正常構造と見間違えやすいのです。
認知バイアスと視覚的習慣
診断行動においては、医師自身の予測や期待が、無意識に読影結果へ影響することがあります。
たとえば、「再発の疑いが低い」と思い込むと、微細な異常を意図的に除外してしまう心理的傾向(=認知バイアス)に陥る可能性があります。
見落としを防ぐための対策
解剖構造の理解を深める研修の継続
見落としの原因の一つとして、正常構造と異常構造の違いに気づけないことが挙げられます。特に腹部では、腸管・血管・リンパ・脂肪組織が複雑に交差しており、構造の重なりが誤認を誘発します。
- 定期的な臨床解剖学に基づく読影研修の実施
- 症例ベースの画像読影勉強会の導入
これにより、読影医だけでなく診療放射線技師のスキル向上にもつながります。
横断像・冠状断・矢状断を組み合わせた立体的読影の実践
一方向からの読影では、腫瘤の形状や連続性を見誤ることがあります。特にGISTのような腫瘍は、腸管との連続・非連続の判断が鍵となるため、冠状断・矢状断・3D再構成など断面の切り替えを意識的に行うことや、腸管走行を丁寧に追跡し、腫瘍との連続性を見極める視点を全員で共有することなどが、見落としのない読影へと繋がります。
ダブルチェック体制やAI補助の導入
人的リソースや経験の差が見落としを生む要因となることがあります。そこで、ダブルチェック体制を築くことや読影支援AI(CAD:Computer Aided Detection)を活用することもひとつの解決手段となります。
そして院内での見落とし事例の蓄積と共有を行い、組織全体で見落としに対する対策意識を強化することが重要です。
腹部の画像診断に関するまとめ
腹部の画像診断は構造の複雑さや腫瘍の紛らわしさから、見落としが起こりやすい領域。今回紹介した再発GISTのように腸管と一体化して見える病変は、特に注意が必要です。
こうした見落としを防ぐには、教育体制の強化、立体的な読影の徹底、ダブルチェックやAI導入が選択肢として挙げられます。診断精度の向上は、患者の安全だけでなく病院の信頼にも直結するでしょう。
ワイズ・リーディングは、実例に基づく症例共有と診断支援を通じて、組織全体の読影力向上を支援しています。
※外部サイトに飛びます。

